防蟻薬剤の問題点
現在、日本で使用される防蟻薬剤は有機系の薬剤が主流です。そして薬剤の持続効果は最長で5年ということですが、なぜたった5年なのでしょう。
木造建築の防蟻薬剤として使用が認められているものには、アレスリン、イミダクロプリド、シプロコナゾールなどの薬剤がありますが、いずれも持続効果は短く、日本シロアリ対策協会通達では 「薬剤の持続効果は最大で5年間」「5年を目処に再処理を行う」などの旨が明記されています。
じつは、昔はもっと持続効果の高い、強力な薬剤もあったのです。日本では従来、神経毒性を持つ農薬系有機薬剤の散布が行われてきましたが、 建築基準法の改正によりクロルデン(効果30年以上)、クロルピリホス(効果5年以上)といった効果が長く持続する農薬の使用が禁止されたのです。
今、使用が認められている薬剤については、胎児への影響などが懸念されてはいますが、シロアリ被害を防ぐために必要最低限の効力を持つ薬剤として認められているものです。
ですが、5年毎に再処理することを前提に使用されている防蟻薬剤ですが、 現実には断熱材が詰まった壁内部の再処理はできません。再処理可能であった床下も省エネ意識の高まりと冷暖房効率を優先する考えから、木造住宅に外断熱工法・蓄熱工法を採用する例が増えています。つまり床下スペースが気密・断熱層の室内側になっているということです。そこに防蟻処理をおこなった場合、居住部分が薬剤成分に汚染されるということです。ですから、高気密な住宅であるほど薬剤の人体への影響は大きくなる為、床下へ使用する防蟻薬剤は、揮発しないもの、人体への影響が少ないものを使用する必要があります。